*[孫]紅勾

これからもずっと

「おい、昌浩はまだ蔵にいるのか？そろそろ来る時間だろう」

台所に立つ背中に声をかけると、リズム良く響いていた音が途切れる。

「あーそういえば遅いなぁ。一体何をやってるんだか」
「呼びにいった方が良いんじゃないのか？」
「…別に俺じゃなくても勾がいけば…」
「私は洗濯物がある」

俺も現在進行形で昼飯を作っている真っ最中なのだが、という台詞を器用に飲み込んで、はぁと息をつく。
ここで反論でもしようものなら、昌浩を呼びに行くのが３０分後とかになるだろう。
それでは確実に昌浩不在のまま彰子が来てしまう。そうなってしまったら後でまた何を言われるか。
自分が彼女に口で勝ったためしなどないのだから、ここは素直に従っておくべきだろう。

「…行って来る」
「ああ」

やっぱり最後にため息をついて、彼は台所をあとにした。

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これからもずっと　口で勝てない