「ねぇねぇ、なんで六合っていつもポケットに手入れてんの?」
自分よりはるかに器用な手を隠して立っている青年を指差して、高い位置にある顔を見上げた。
「んー?…あぁ、まぁなんて言うか、過保護?いや違うな。心配性の方が近いか?」
「は?」
一応答えをくれる気であったようだが、逆に悩まれてしまった。上手い言葉が見つからないらしい。
ぐるぐると鍋をかき回しつつ、眉間にシワを作っている。
相変わらず鍋料理率が高い彼の作る今日の夕飯は、どうやらハヤシライスであるようだ。
答えてくれたのは観察力に長けている神将だった。
「情が深いんだよ、あれは。舅(しゅうと)も面倒くさいしな」
「?」
「まぁ、寂しい思いをさせるのはなぁ」
「どういうこと?」
二人だけ分かっている風で、自分にはまったく理解できない。
ポケットに手を入れているのが、どうして舅だとか寂しいだとかいう話になるのだろう。
「彼女からの連絡を、見逃したくないんだよ」
いつも一緒にいれる訳ではないから。
控えめな彼女の呼びかけに、出来るだけ応えたいと。あまりワガママをいうタイプではない彼女だから余計に。
寂しい思いをさせたくはないし、過保護な舅に文句を言われるのも避けたいのだろう。
そんなに思っているのなら一緒に住めばいいだろうに、と思わなくもないのだか、彼には彼なりに考えがあるのだろう。
決めるのは当事者たちだから、本気で口出しするのはお節介だと思われる。
指先はいつでもポケットの携帯電話に集中している。想いを伝える唯一の物だから。
静かに振るえる小さなサインを、決して見逃さないように。
彼女の想いに、気付けるように。
六風が出てこない六風
何が書きたかったのかよく分からなくなってしまった。
現代パラレル