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(本館:空依 お題*純 伽

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そしてそれは儚くて*








一枚の写真。
ただ里香が廊下を歩いているだけの写真。それに群がり次々と値段を上げていく男達。
それを一万円という、高校生には大きすぎる価格で落札した僕。
山西にはバカだと言われたけれど、そんなの関係ない。他の男の手に渡るよりもよっぽどましだ。
あいつらが部屋でにやにやしながら里香の写真を眺めているなんて、考えられない。絶対にありえないね。
それが一万円で阻止できるなら安いものだ。


文化祭での例のオークションで落札した写真を、机の引き出しへと入れる。
その引き出しには、他にも写真が何枚も入っている。そのほとんどが、里香の写真だ。
笑ってるのとか、怒ってるのとか、照れてるの。アップだったり、背景と一緒だったり。里香の全てがこの中にしまわれてるみたいだ。
でも本当はまだまだ足りない。こんなの里香の一部でしかない。今度は泣き顔でも撮ってやろう。その後きっと怒るけど。
そのたくさんの写真に埋もれながらたたずむ、一枚の紙を見つけた。

「あ・・・」

その紙には、司とみゆきの名前。それに、里香の名前。そして、僕の名前。
全ての記入欄は埋まっている。

これ一枚で、里香の苗字が、変わる。
これを出す日はきっとまだずっと先だ。

―もしかしたら、出すこともないかもしれない。それでも、

それをまた写真の下に、隠すように入れて静かに閉める。鍵をかけて、絶対に、なくさないように。
僕を呼ぶ声がする。そろそろ里香が怒っているのかもしれない。
もう一度鍵を確認して、僕は里香の元へと歩き始めた。







そしてそれは儚くて でも大切で

(「半分の月がのぼる空」の裕一×里香)

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