「貴方は、本当にお優しい方ですわね」
思わず見惚れるような笑みを唇にのせて、彼女は言った。この状況を楽しんでいるようにさえ聞こえる。
それに呑まれないように、銃口を彼女の鼻先に触れるか触れないかのぎりぎりの位置で合わせる。
「それは褒め言葉として受け取っても?」
「・・・ここまで来て、まだ撃たないおつもりですか?」
答えは与えず、逆に問いかけてくる。一体、何を考えているのか分からない。ただそこに立っているだけ。
―まるで撃たれたいとでも言うように。
「・・・君は、僕に撃たれたいの?」
「いいえ。・・・ただ、あなたが撃たないと分かっているだけですわ」
撃たないと分かっているから、撃たせようとしているのか。
思わず顔をしかめた。それを見て、彼女は更に笑みを深くする。
「あなたには私を撃てない。・・・そして私もあなたを殺せない。これがどういう意味かお分かりになりますか?」
彼女の声は優しく、残酷で。はっきりと突きつけてくる、澄んだ音。
それはまるで呪縛のように
彼女は静かに手を伸ばした。
銃を下ろして、応えるようにその手を掴む。軽く腕を引いて、
笑む唇にそっと口付けた。
(何が僕等を縛るのか、)
やわらかな鎖 それはまるで、